🚗「止められない車」が社会の盲点に?
アクセルとブレーキの踏み間違い事故の実態と、“今どき止まらない車”への問題提起
カテゴリ:社会・安全・交通
序章:「また踏み間違い事故」― それ、本当にドライバーだけの責任ですか?
ニュースで「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」を見ない週は、ほとんどありません。
「高齢者がまた」「運転ミスが原因」といった報道が繰り返されるたび、
私たちは“運転者個人のミス”として処理していないでしょうか?
しかし私は思います。
―― 今どき止められない車の方が悪いのでは?
テクノロジーがこれだけ進化した時代に、
誤ってアクセルを踏んでも止まらない、暴走を防げない車がまだ多数走っている現実。
それを「人間のミス」で片付けてよいのか。
この構造こそ、社会全体で見直すべきだと感じています。
第1章:踏み間違い事故の実態 ― 数字の裏にある「設計の遅れ」
交通事故総合分析センター(ITARDA)の報告によれば、
2018~2020年の3年間で「踏み間違い」による死傷事故は 9,738件。
1年あたりおよそ 3,000件以上。
その多くが「駐車場」や「発進時」などの低速走行時に発生しています。
そして、75歳以上の高齢者が関係するケースが約2,000件を超える一方、
24歳以下の若者も1,600件以上を起こしているのが現実です。
この数字が意味するのは――
ヒューマンエラーは年齢を問わず発生するという事実。
そして、その「エラーを検知し、止められない車」がまだ道路上にあふれているという現状です。
第2章:「止められない車」が存在する理由 ― 技術より“コスト”を優先?
2025年にもなろうというこの時代、
誤発進抑制や自動ブレーキ、前後障害物検知は決して珍しい技術ではありません。
むしろ、**“搭載していないこと自体がリスク”**です。
しかし現実には、こうした装備は今なお「上位グレード限定」「オプション扱い」という車が多数。
軽自動車・コンパクトカーなど、普及台数の多いカテゴリーほど装備率が低い傾向にあります。
“命を守る装備が、グレード次第でつけられない”
― この構造そのものが、社会的な盲点ではないでしょうか。
私たちはこれを、「ドライバーのミス」と呼ぶことで、
実はメーカーの設計思想の遅れを見逃しているのかもしれません。
第3章:最新車の「止まる力」と旧世代車の「止まらなさ」
ここで比較してみましょう。
| 区分 | 主な安全装備 | 誤発進・踏み間違い時の動作 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 最新モデル(2022年以降) | 自動ブレーキ+誤発進抑制+障害物検知 | 加速前にエンジン出力をカット。障害物検知で自動ブレーキ作動 | コンビニ突入事故をほぼ防止 |
| 2010年代中期車両 | 自動ブレーキは前方のみ | 前進時のみ対応、後退では暴走の可能性あり | 駐車場事故が多発 |
| 2000年代以前 | 安全装備なし | 誤発進を検知せず、全開加速 | 高齢者が多く使用中 |
この比較を見ると、明らかに“技術的な差”が事故率を左右していることがわかります。
つまり、「止められない車」が事故を起こし、「止められる車」が事故を防いでいる構図です。
第4章:それでも“ドライバーの責任”で片付ける社会
踏み間違い事故が起こるたび、
「高齢者は免許を返納すべき」「注意不足が原因」などの論調が巻き起こります。
しかし、もしその車に自動停止装置がついていれば、
アクセルを踏み間違えても暴走は防げたかもしれません。
それなのに社会は「操作ミス」と切り捨て、
メーカーは「装備はオプションです」と言い逃れる。
技術的に止められるのに、止めないまま販売している。
これは**“構造的な怠慢”**といえるのではないでしょうか。
第5章:車種・グレード公開の意義 ― 責任を「見える化」するために
私は、事故が起きた際に「車種・グレードを公開すべき」と考えています。
それは、犯人探しではなく、安全性の可視化のためです。
- どの車がどの安全装備を搭載していたのか
- 発生した事故の多くが“安全装備非搭載車”だったのか
- グレード間でどれほどの安全性能差があるのか
これを明示することで、メーカーも消費者も正しい判断ができる。
「買う人が安全を選べる社会」に変えていけるのです。
第6章:メーカー・行政が今すぐ取り組むべきこと
- 全車種に誤発進抑制を標準装備化
軽自動車や旧世代モデルにも後付け対応を。 - 装備有無を義務的に開示
「安全装備なし車」を販売する際は、明示的な説明を義務づける。 - 事故統計の透明化
車種・グレード別の安全性データを公的に公開し、社会的検証を可能にする。 - 自治体の補助制度
誤発進防止装置の後付けに補助金を出すなど、実効的対策を広げる。
第7章:ドライバーができる、自分と家族を守る意識改革
- 「止められない車」に乗っている自覚を持つ
- 安全装備がない車は“操作で補う”しかないと認識する
- 家族の車にも安全機能があるかを確認する
- 高齢の親に、買い替え・機能追加を提案する勇気を持つ
結論:止まる車が“標準”になる社会を
「止まらない車を止める技術」は、すでに存在します。
問題は、それを“すべての車に搭載する社会的意思”があるかどうかです。
ドライバーにだけ責任を押しつけるのはもうやめましょう。
テクノロジーが人の命を守る時代に、止められない車を走らせている社会の方が遅れているのです。
