
大阪万博“null²(ヌルヌル)”―落合陽一が創る、鏡とAIが奏でる『ヌル哲学』体験記(良かった)
【導入】
2025年7月3日、大阪・関西万博の日本ナショナルデー。私は人波と混雑を避け、かねてから話題だった落合陽一プロデュースのパビリオン「null²(ヌルヌル)」を訪れた。SNSでは”予約困難”と噂されていたが、それも納得。未来感に満ちた建築と演出、そして“自分とは何か”を問い直す哲学的体験に圧倒された。
null²は、ただの展示ではない。それは”空(ヌル)”という概念を、建築・AI・音・鏡・アプリによって五感で感じる異次元の空間だ。私はこの体験を、記録として、そしてこれから行く人へのガイドとして書き残しておきたい。
【1. null²とは何か?】
null²(ヌルヌル)は、落合陽一氏が手がけた万博パビリオンのひとつ。”デジタルネイチャー”の思想を背景に、建築とAI、アートを融合させた先鋭的な施設である。
名称の”null²”は、プログラミング言語における”null”(無)と、仏教の”空”(くう)を掛け合わせ、さらにそれを”2乗”することで”無のその先”を表現しているという。
展示空間は、鏡のような膜”ミラーメンブレン”が外装を構成し、音や風、アクチュエータによってうねる。それはまるで”建築が呼吸している”ような感覚。外から眺めるだけでも異様な存在感を放つが、内部の体験がさらに異次元だった。
【2. 私が体験した”揺らぎと問い”】
私はなんとか事前予約できた。
建物の中は静かで暗く、床も天井もLEDで構成されたキューブ状の空間。反射する鏡に囲まれ、自分の姿が幾重にも写り込み、早くも現実感が歪む。
中央には無数のディスプレイと、アバターたちが浮かぶスクリーン。自分が事前登録した顔や声が、AIによって生成された分身として登場し、動き、話し始める。
“あなたは、どこから来ましたか?”
これは演出ではない。問いかけだ。機械が、私の顔で、私に問いかけてくる。その瞬間、私は自分が”他者化”されていく感覚に包まれた。
【3. 落合陽一の思想が染み渡る空間】
この空間の根底には、落合陽一の哲学がある。彼の言う”デジタルネイチャー”は、テクノロジーと自然、人工と生命の融合。null²はその象徴として、「建築が生命を持つ」「人間がデータで再構成される」ことを体験できる場なのだ。
しかも、null²は巡回可能なモジュール設計。2m~8mのボクセルで構成され、将来的には別会場にも応用可能とされている。
【4. 評判とリアクション】
SNSやレビューサイトを見ると、null²の体験は賛否両論。
【好意的な意見】
- “涙が出た。自分の存在に揺さぶられた”
- “落合陽一らしい哲学的体験。さすが”
- “まるで万華鏡の中に入り込んだよう”
【否定的な意見】
- “意外に短い体験時間”
- “よくわからなかった。小学生連れには難解”
- “写真は映えるけど、中身が薄い”
つまり、万人受けする内容ではない。しかしそれがこの展示の価値でもある。
【5. 攻略ガイド:これだけは押さえておけ】
- 意外と事前予約が取れた。
- 顔・声の登録は事前にアプリで済ませておくとスムーズ。
- 暗く、鏡ばりの空間が続くため、小さなお子様連れや三半規管が弱い方は注意。
- 体験は10〜15分程度と短いため、内容を意識して臨むと満足度が変わる。
【6. 結論:未来は“静かな部屋”にあった】 null²を体験して感じたのは、未来とは派手なテクノロジーではなく、”問いと沈黙”にあるのではないかということ。人間とは何か、自己とは何か、存在とは何か。
静かな鏡の部屋で、機械に問いかけられながら、自分を見つめ直す。その体験は、確かに“未来”だった。
行列を避け、整理券を勝ち取り、わずか15分。だが、その15分が、これほど深く記憶に刻まれるとは。
落合陽一のnull²。これは、大阪万博で最も哲学的で、最も忘れがたい体験だった。
















