🏦見えない税金「インフレ税」──コアコアCPIの歪みが奪う、若者と高齢者の未来
カテゴリー:経済・社会・ライフマネー
■ 序章:静かに進行する“見えない搾取”
ニュースで「インフレ率2%達成」や「経済回復が続く」といった言葉が踊る。
だが、実際の暮らしの実感はまるで違う。
スーパーで卵や牛乳、ガソリンを買うたびに、「これで本当に2%なのか」と感じる人は多いはずだ。
政府や日銀が拠り所にしている**コアコアCPI(除く生鮮食品およびエネルギーの消費者物価指数)**は、
生活実態を十分に反映しているとは言い難い。
現実には、生活必需品の値上げが生活の中心を直撃しており、
数字上の「安定」と実際の「苦しさ」はどんどん乖離している。
■ 若者と高齢者、二つの“異なる痛み”
● 若者:上昇する生活コストと見えない税金
若者世代は、まだ働き盛りであり、収入を増やすチャンスもある。
しかし、インフレはその努力の果実を奪う。
給与が上がっても、税金・社会保険料・物価上昇が三重苦のように襲い、
「実質可処分所得」はむしろ減少していく。
企業が好景気を装ってベースアップをしても、それは名目上の上昇でしかない。
たとえボーナスが増えても、家賃と食費で消えてしまう。
貯金をしても金利はゼロ、将来の見通しは暗い。
そして気づけば、若者の中にも**「もう努力しても意味がない」**という諦めが広がっている。
● 高齢者:逃げ場のない固定収入の地獄
年金で暮らす高齢者にとって、インフレはまさに“見えない脅威”だ。
なぜなら、彼らの収入は固定されているからだ。
年金の改定は物価上昇に遅れて反映される上、
実際の物価上昇を過小評価するCPIに基づいているため、
生活実感との差はますます広がっていく。
特に問題なのが、住まいの問題だ。
長年住み続けた家を担保にして生活資金を得る「リバースモーゲージ」を利用する高齢者が増えている。
だが、金利上昇や地価下落が重なれば、契約の維持が困難となり、
**“自宅を失う老後”**という悲劇が現実になる。
「家だけは残る」と信じていた世代にとって、
インフレは静かにその基盤を崩していく。
■ 日銀のジレンマ:誰のための金融政策か?
高齢者からすれば、日銀は利下げをしてほしいと思うだろう。
金利が上がれば住宅ローンは上昇し、若い世代の家庭の負担も重くなる。
だが、金利を下げれば通貨の価値はさらに下がり、
輸入価格の上昇で物価が再び上がる。
つまり、どちらの政策を取っても、家計は苦しむ構造になっているのだ。
そして最も深刻なのは、
この構造が「意図せず」生まれているのではなく、
政府部門が家庭部門から資産を移転するための構造として機能している点である。
■ インフレは“国家が仕掛ける税金”——インフレ税の正体
インフレは、見た目には税金ではない。
しかし、実際には家計の購買力を奪うことで、政府の債務を軽くする仕組みになっている。
これが経済学でいう「インフレ税(Inflation Tax)」だ。
国債を大量に発行してきた日本政府は、
名目成長率を上げることで、**債務残高を“実質的に減らす”**ことを狙っている。
つまり、政府はインフレをある程度「歓迎」しているのだ。
だが、その代償として、国民は静かに損をしていく。
預金の価値は目減りし、生活コストは上がり、
結局、庶民の貯蓄が国家の赤字を穴埋めする構造が完成してしまう。
■ 何を守るべきか:家計の自己防衛戦略
- 現金・預金に偏らないポートフォリオを作る
→ 長期的にはインフレに強い資産(株式・REIT・外貨・金など)を少しずつ組み込む。 - 固定金利への切り替えを検討
→ 変動金利の住宅ローンは、インフレ局面で最大のリスクとなる。 - 生活防衛資金の見直し
→ “万一のための3か月分”では足りない時代。半年〜1年を目標に。 - 消費の最適化より、「支出構造の再設計」
→ サブスクや固定費を根本的に見直す。
インフレは止められない。
だが、「自分の可処分所得を守る」ことはできる。
■ 終章:数字では測れない“生きる実感”を取り戻す
コアコアCPIの数値がどうであれ、
家計に残る現金の重みこそが“本当の物価”だ。
統計が現実を軽視する時、
私たちは「データ」ではなく「生活者」として声を上げる必要がある。
政治も経済も、“誰のためのものか”。
いま一度、その問いを胸に刻むべき時が来ている。
