
10月の食品値上げに唖然 ― 新自由主義経済が突きつける現実と富の収奪構造
はじめに
2025年10月、日本社会はまた新たな「値上げの波」に直面しています。日々の生活に欠かせない食品や日用品、光熱費などが次々と引き上げられ、家計に大きな負担がのしかかっています。その一方で、大企業は過去最高益を更新し続け、株主への配当や自社株買いに巨額を投じている。この対比はまさに、新自由主義経済の極致とも言える状況です。
本記事では、この値上げの背景にある構造を掘り下げ、富の移転がどのように行われているのかを明らかにしながら、日本経済が直面する課題について考察していきます。
値上げラッシュの実態
生活必需品が次々と高騰
- 食品(パン、乳製品、加工肉、調味料など)の価格改定
- 電気・ガス料金の基本料金見直し
- スーパーや外食チェーンの値上げ
「賃金は上がらないのに、生活費だけが膨らむ」――これは多くの市民が抱く実感です。特に低所得層や子育て世代、年金生活者にとっては、生活の根幹を揺るがす深刻な問題です。
企業の最高益との対比
財務省の統計によれば、大企業の経常利益は過去最大を更新しています。内部留保は500兆円を超え、株主還元は過去最多水準。一方で、労働分配率は低下の一途をたどり、従業員への給与還元は限定的。まさに「企業は潤い、家計は干上がる」構図です。
富の移転構造 ― 値上げと増税の二重苦
値上げによる富の移転
- 消費者が日々の生活のために支払うコストは増加
- 企業はコスト上昇を超える価格転嫁を行い、利益を確保
- 結果として、家計から企業への富の移転が加速
政府への富の移転 ― 増税とインフレ税
- 消費税や社会保険料の引き上げ
- インフレ税(貨幣価値の目減りによる実質的な課税)
- 「家計 → 企業 → 政府」への資金シフトが顕著に
これはまさに、家計部門に溜まった富の収奪プロセスとも言えます。すでに1000兆円を超えるとされる家計の金融資産が、少しずつ吸い上げられていく構図です。
新自由主義の帰結 ― 労働分配率の低迷
完全雇用下でのジレンマ
日本の失業率は歴史的に低水準。いわば「ほぼ完全雇用」に近い状況です。しかしながら、実質賃金は伸び悩み、非正規雇用やワーキングプアが拡大。働いても豊かになれない「逆説的な完全雇用社会」に突入しています。
労働分配率を重視すべき理由
- 賃金上昇がなければ、消費は伸びず内需は縮小
- 労働者の購買力低下は経済の持続性を削ぐ
- 富の偏在が政治的不安定をもたらす
つまり、企業が利益を株主や内部留保に偏らせるのではなく、労働者に分配する仕組みを強化しなければ、日本経済は持続的な成長から遠ざかるのです。
1000兆円を超える家計資産の行方
日本の家計部門が保有する金融資産は1000兆円を超える規模に達しています。この資産が「どこに向かうのか」が今後の日本経済を左右します。
予想されるシナリオ
- 資産の消耗シナリオ:値上げと増税で生活費がかさみ、家計の貯蓄が取り崩されていく
- 資産の金融市場流入シナリオ:資産運用ブームの流れで株式市場や投資信託に資金が移動し、企業や金融機関に集中
- 資産の再分配シナリオ:政策転換によって賃金や社会保障に回され、消費に還元される
現状のままでは、1と2のシナリオが進行し、庶民の生活がさらに苦しくなるリスクが高いと言わざるを得ません。
まとめ ― 富の偏在を是正するために
食品値上げのニュースは、単なる家計負担の問題ではありません。それは、日本経済がどの方向に進んでいるのかを示す警鐘でもあります。新自由主義的な構造が強まれば強まるほど、富は家計から企業と政府に集中し、格差は拡大していくでしょう。
いま求められるのは、
- 労働分配率を高める政策
- 富の偏在を是正する税制改革
- 家計の資産を生活向上に還元する仕組み
これらを実現しなければ、「働いても報われない社会」が常態化してしまいます。日本が真に豊かな国として持続可能な未来を描くためには、今こそ経済の仕組みそのものを問い直す時なのです。













