アベノミクス「3本目の矢」が10年越しで効き始めた?
いまの日本株高の“本当の理由”を読み解く
最近の日経平均、TOPIXの強さ、正直ヤバい。
「円安ブーストだからでしょ」とか「海外勢が適当に買ってるだけ」とか
そんな雑な解説も多いけど──実は背景はもっと深い。
結論から言うと、 アベノミクスの成長戦略(3本目の矢)が“10年遅れ”で効いて、今の日本株を底上げしている。
しかも同時に、 外資に“買い叩かれている”側面も確実に存在する。
この2つが同時進行しているのが、いまの日本市場のリアル。
ここでは、
「なぜ10年越しに効果が出てきたのか?」
「外国人投資家は日本の何を評価しているのか?」
「それって結局、日本は買い叩かれているだけなのか?」
を、わかりやすく解説していく。
◆ アベノミクスの「3本目の矢」は“最も遅効性”だった
アベノミクスはよく知られている通り、
- 金融緩和
- 財政出動
- 成長戦略(構造改革)
の3本構成。
このうち「3本目=成長戦略」が当時もっとも“効き目が見えない”と言われていた。
けれど、実際にはここで導入された改革──
- コーポレートガバナンスコード(CGコード)
- スチュワードシップコード
- 社外取締役の強化
- 企業のROE・ROIC意識改革
- 現金の保有理由の説明義務
- 東証改革(PBR1倍割れに改善圧力)
これらが 企業文化と投資家の意識をジワジワ変えていき、
いまの株高の“地盤”を作っている。
制度ってこういうもの。
すぐ効く薬じゃない。
組織文化・意識改革は 5〜10年かけてようやく企業行動に反映される。
◆ 東証改革が外国人投資家のスイッチを押した
2022〜2023年にかけて、東証が「改革本気モード」に入った。
「資本コストを意識しろ」
「PBR1倍割れなら改善計画を出せ」
この“明確な圧力”が外国人投資家に刺さった。
外国勢は数字・制度・仕組みで動く。
「日本企業、ついに資本効率を本気で改善させるの?」
という認識が広がり、
海外マネーの流入につながっている。
このスイッチを押したのが3本目の矢の延長線上にある改革群。
◆ 日本株は外資から“最後のバリュー市場”に見えている
外国人投資家から見ると、日本はこう見えている。
- 企業がアホみたいに現金をため込んでいる
- 配当性向が低く、還元余地が大きい
- PBR1倍割れの宝庫
- 社外取締役義務化で、経営の透明性が昔より改善
- 敵対的買収の防衛策が弱い
- 円安でドル建てだとさらに割安
つまり、
「改善したら爆発的に利益が伸びる“未開拓の金鉱”」
これがBuy Japanの根本理由。
◆ じゃあ、日本は“買い叩かれている”のか?
答えは Yes でもあり No でもある。
◆ Yes —— 買い叩かれている部分
- 円安で“ドル建て割安感”が極端に強い
→ 外資は円安の間に仕込みたい。 - ガバナンス改革で外資が入りやすい市場に変わった
→ 経営側は外資ファンドに逆らいにくい。 - 防衛策が弱い企業がまだ多い
→ 海外ファンドの“物言う株主化”が進みやすい。
◆ No —— 企業価値は確実に上がってきている
改革によって、
- ROE向上
- 増配
- 自社株買い
- 不採算事業の切り離し
- 経営トップの入れ替え
が起きており、
企業自体が“買われる価値を持ち始めた”。
つまり:
外資に買い叩かれているのは事実だが、そもそも企業が魅力化した結果でもある。
◆ いま起きていること:
“改革の果実”と“外資の収奪”の両方が同時に進行している
これが一番リアルな視点。
日本株は、
- 改革の成果として正当に評価されて上がっている部分
- 円安・割安のまま外資に買われている部分
この2つが混ざり合っている。
どちらか一方しか語られない解説は“浅い”。
◆ 個人投資家はどう動けばいい?
ここが一番重要。
① 日本株は「割安から“適正価格へ”戻る途中」
まだ割高ではない銘柄が多い。
ゆえに一部の日本株はまだ“持つ価値アリ”。
② J-REIT・インフラファンドは逆に出遅れ
金利上昇不安で売られているけど、
ここは逆張り妙味が出てきてる。
③ 海外ETF(S&P500/オルカン)と併用し “円リスク”から逃げる
いまの株高が「円安の裏返し」だけで終わる可能性もある。
円建ての価値が落ちてるなら、
外貨資産は自然ヘッジ。
④ 外資に狙われる優良バリュー銘柄は狙い目
PBR1倍割れでキャッシュが膨れてる企業は
外資ファンドが真っ先に買う。
◆ 結論:
アベノミクスの「3本目の矢」は、いまになって市場に火をつけた
あなたの直感どおり、
日本株の強さは「円安だけじゃない」。
- 東証改革
- ガバナンスコード
- 資本コストの明確化
- 投資家還元強化
これら構造改革の積み上げが、
10年かけて企業価値の底上げを起こした。
だけどその裏で、
- 割安な日本企業を外資が買い叩く
- 経営権まで持っていかれる
という静かな“力学の変化”も進んでいる。
だからこそ、
今の日本株市場は「祝祭」と「収奪」の境目に立っている──
そんな複雑なフェーズだ。
