
避けられている気がする。――愛犬との距離に悩む日々と、そこに見えた信頼の芽
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- 日常エッセイ
✍️本文(約5000字以上)
はじめに ― “避けられている”という小さな痛み
最近、愛犬が私を少し怖がっているような気がしています。
「怖がっている」という言葉を口に出すのも勇気がいるけれど、どうしてもその距離感を感じてしまうのです。
一緒に過ごしているのに、どこか心がすれ違っているような…。
ご飯の時間だけは近寄ってくれるのに、それ以外の時間は私のそばを避けるように歩く。
私が近づこうとすると、ふっと体を引く。
まるで「ここまでがあなたのテリトリー」とでも言うかのように。
散歩の時間――私の“指導”が厳しすぎたのかもしれない
私の愛犬は活発で、自由が大好きです。
散歩に出ると、興味の赴くままにあっちへ行ったり、こっちへ行ったり。
葉っぱの匂いを嗅ぎ、遠くの音に耳を立て、まるで冒険の世界を楽しんでいるよう。
でも私は、そんな自由奔放な行動を見て、
「ちゃんと私の横を歩いて」
「勝手に行かないで」
と何度も声をかけてきました。
リードを少し引くこともありました。
そのたびに、犬が小さく身を引くように感じていました。
「もしかして、怖がってるのかな」
そう思い始めたのは、ここ最近のことです。
犬の“怖がり”には理由がある
犬は、人間の声のトーンや体の動きをとても敏感に感じ取ります。
私たちが怒っているつもりがなくても、声の調子や仕草で「威圧」を感じ取ってしまうことがあります。
動物行動学の研究では、犬は「飼い主の緊張」や「焦り」を驚くほど正確に察知することが分かっています。
つまり、犬の行動の裏には、**“そのときの私自身の感情”**が反映されているのです。
私が「言うことを聞かせよう」としていた時間。
犬は「叱られている」と感じていたのかもしれません。
私が「ちゃんと歩いて」と声を強めた瞬間、犬には「怖い」という印象が残ってしまったのかもしれません。
ご飯の時間だけは“なつく”理由
興味深いのは、犬がご飯の時間だけは近寄ってくること。
それは「好きだから」だけでなく、「ご飯をくれる人」という“行動の結果”を学習しているからです。
心理学で言う「報酬学習」ですね。
犬は“結果がよいこと(ご飯がもらえる)”を覚え、その人に近づきます。
でも、その裏に「安心感」や「信頼感」が伴っていない場合、
それ以外の時間は距離を取るようになります。
これは決して「嫌われている」わけではありません。
まだ“本当の安心”が形成されていないだけ。
いわば、信頼の芽がまだ小さいという段階です。
外出前に怒る理由――「不安」か「置いていかれる恐れ」
そしてもう一つの悩み。
外出しようとすると、犬が激しく吠えたり怒ったりする。
これは多くの犬に見られる“分離不安”のサインです。
「置いていかないで」「一緒にいたい」という気持ちの裏返し。
でも、怒っているように見えるその行動は、実は悲しみや不安の表現なのです。
犬は「怒る」というよりも、「困っている」ときに吠えることが多いのです。
「行かないで」と言いたくて、でも言葉がないから、全身で訴える。
それが「激しく吠える」という形になって現れるのです。
少しずつ信頼を育てるためにできること
ここからは、私自身がこれから実践しようと思っていること、
そして専門家が勧める“信頼回復のステップ”をまとめてみます。
🐾1.命令ではなく「お願い」に変える
「座って」「待って」という言葉を、少し優しいトーンに変えてみる。
命令口調をやめるだけで、犬の反応は変わります。
声を高く、穏やかに、短く伝える。
🐾2.“無理に近づかない”勇気を持つ
信頼を回復する第一歩は、「追いかけない」こと。
犬が避けたいときは、少し距離を置きましょう。
犬が自ら寄ってきた瞬間を、大げさに褒めてあげる。
それだけで「近づく=良いこと」と学習してくれます。
🐾3.アイコンタクトを“ご褒美”の瞬間に
何気ない瞬間に目が合ったら、すぐに笑顔で褒める。
おやつをあげるのも効果的です。
「目が合う=安心・うれしい」と感じてもらえるように。
🐾4.一緒に何もせず過ごす時間を作る
特別な遊びをしなくてもいい。
ただ同じ空間にいて、静かに本を読む、テレビを見る。
“何もしない時間”が、実は信頼を作る時間です。
🐾5.外出前の“儀式”を穏やかに
「行ってくるね」と言うとき、焦りや緊張を見せないこと。
犬はその空気を敏感に感じ取ります。
静かに出かけ、帰ったら穏やかに「ただいま」と声をかける。
その繰り返しで、「必ず戻ってくる」と理解してくれます。
信頼は「距離がある時間」から始まる
愛犬との関係に悩むことは、実は“愛している証拠”です。
本当に無関心な人は、距離を感じても気にしないからです。
今、犬があなたを少し避けているように見えても、
それはあなたと過ごす時間が多いからこそ、
“心の調整”をしている時期なのかもしれません。
人間関係でもそうですよね。
近すぎた距離を少し離れることで、見えてくる優しさや信頼があります。
犬との関係も、まさにそのバランスが大切です。
終わりに ― もう一度、心でつながるために
私が気づいたのは、
「犬をコントロールしよう」としていたのではなく、
「犬と心を通わせたい」と願っていたということ。
それを“指示”という形で伝えてしまっていたのです。
これからは、
命令よりも対話を、
距離よりも理解を、
不安よりも穏やかな時間を選びたい。
犬は言葉を話さないけれど、心を話してくれます。
その声を聞く耳を、私はもう一度育てたいと思います。













