
【東京都議会議員選挙2025:なぜ自民と公明が生き残るのか——都民の選択に見る”変化”と”保守”のリアル】
2025年、東京都議会議員選挙の結果が出揃った。
最も議席を獲得したのは都民ファーストの会で31議席、次いで公明党19議席、自民党21議席。立憲民主党は17議席、共産党は14議席、国民民主党が9議席、参政党が3議席。そして無所属やその他の会派で12議席。
私はこの結果を見て、正直、釈然としない気持ちを抱いた——
「それでも、自民党と公明党が当選するのか?まだ投票する国民がいるのか?」
今回は、この問いを深掘りしながら、なぜ自公が依然として議席を確保できるのか、そして都民の選択に見える”深層心理”を読み解いていきたい。
1. 自民・公明の強さは”既得権益”の裏返しではない
まず第一に言えるのは、自民党・公明党が支持を集めるのは、単なる”保守票”というよりも、
“失敗したくない心理”
が根底にある。
「都政が混乱するのは困る」 「ある程度経験のある政党に任せたい」 「何だかんだいって、自公が無難では?」
このような空気感が、固定票以外の有権者にも広がっていた。 特に公明党は創価学会を中心にした強固な組織票があるため、全候補者が当選する“全勝神話”を今回も維持した。
2. 無党派層の投票行動とメディア報道のズレ
メディアやSNSを見ていると、「都民はもっと怒ってるはず」という論調が目立つ。 しかし、実際に投票に行ったのは“怒っている層”ではなく、
「関心はあるが極端には動けない」層
だった。
この層はテレビや新聞、地域の情報を基に、投票先を決める。 つまり、
- 知名度が高い候補者
- 名前を見たことがある政党
- ポスティングされたチラシ
などがそのまま「投票先」に直結する。 SNS上でどれだけ話題になっても、それがリアルな票にならない限り、選挙結果は動かない。
3. 都民ファーストが第1党に返り咲いた意味
都民ファーストの会が31議席で第1党を確保したことは、ある意味で“変化”への期待が残っている証拠でもある。
しかし、小池都知事が事実上率いるこの会派は、もはや”反既得権益”というより、
“第二自民党”的な性格
を帯びつつある。自民党と敵対しながら、時に政策では歩み寄る。都民の多くは、
「完全に新しい勢力は不安。でも、自民には飽きた」
という気持ちで都ファを選んでいる。
つまり、これは“変化を望む保守”の選択なのである。
4. 国民民主党と参政党の躍進が意味すること
今回、国民民主党が9議席、参政党が3議席を確保した。
これは極めて象徴的な出来事だ。
- 国民民主党:現実志向、政策重視
- 参政党:SNSと草の根運動、右派ポジションの受け皿
つまり、「左派か右派か」ではなく、
「わかりやすさ」と「誠実さ」
が票を取ったということ。
特に参政党は“アンチ政党政治”としての役割を果たしており、既存政党に絶望していた層にとっては貴重な選択肢だった。
5. 立憲と共産が伸び悩む理由
立憲民主党(17議席)、共産党(14議席)は、ともに組織としては大きいにもかかわらず、伸び悩んだ。
なぜか?
- 批判はするが代替案が弱い
- ネガティブキャンペーンが多い
- SNSでは共感を集めても、投票にはつながらない
つまり、
「共感はされても、信任はされない」
という構図になっている。
6. 無所属・その他の存在感
今回、無所属や小規模会派が12議席も獲得している。
これは、都民の中にある“顔が見える政治家”への支持の表れだ。
- 地元で活動している人
- 個人で訴えかけた候補
- 政党名に頼らない選択肢
つまり、“候補者個人の信頼感”が票になった。
結論:「変わりたいけど、壊したくない」都民心理
今回の選挙結果は一見、矛盾しているように見える。
- 自民党と公明党が依然として存在感を示し、
- 都民ファーストが再び第1党に返り咲き、
- 国民民主や参政党がじわじわと伸びる。
だが、これは「過激な変化」を望まず、
“ほどよい変化”と”壊れない安定”
を望む都民の集合的意志なのだ。
東京都民は、時に冷徹で、時に現実的だ。 変化は求めるが、革命は望まない。そういった“日本人らしい慎重さ”が色濃く出た選挙だった。
















