
起業して1年半、売上を作れなかった――一人会社を続けるか、たたむか
9月末の決算を整理しながら、かなり落ち込んでいる
会社の9月末決算を整理している。
数字を一つひとつ確認し、会計ソフトの画面を眺めながら、改めて思った。
「何をやっていたんだろう」
残念ながら、胸を張れるような売上は立っていない。
会社を設立した最初の事業年度は半年ほどだった。
だから最初の決算では、
「まだ半年だから仕方がない」
という言い訳もできた。
しかし、それからさらに1年が経った。
つまり、会社を作ってから約1年半。
その間に、自分が思い描いていたような事業を作ることはできなかった。
1年半という時間は、決して短くない。
会社を作った当初は、もっといろいろなことができると思っていた。
AIを使ったビジネス。
これまでの技術や経営の経験を生かした仕事。
コンサルティング。
教育。
コンテンツ販売。
資格や知識を活用したサービス。
可能性はいくつも考えた。
しかし、アイデアを考えることと、実際に「お金を払ってくれる顧客を作ること」は、まったく別の話だった。
決算書に並ぶ数字は容赦がない。
「頑張ったつもりです」
という項目は、決算書には存在しない。
売上は売上。
利益は利益。
現金は現金。
数字だけを見れば、この1年半、私は経営者として結果を残すことができなかった。
正直、恥ずかしい。
売上がほとんどない会社なんて、そんなにあるのだろうか
決算を整理しながら、こんなことも考えた。
「1年半も会社をやっていて、ほとんど売上を作れない会社なんて、あまりないんじゃないか」
他人の会社は、外から見ると立派に見える。
ホームページには、
「お客様の課題を解決します」
「革新的なサービスを提供します」
「未来を創造します」
といった言葉が並ぶ。
SNSを見ると、
「起業しました」
「新サービスを開始しました」
「売上○○万円達成しました」
といった投稿も流れてくる。
そういうものばかり見ていると、自分だけが取り残されているような気持ちになる。
でも、おそらく現実はもう少し違う。
会社を作ったものの、思ったほど仕事を取れない人。
サービスを作ったものの、誰にも買ってもらえない人。
営業が苦手で、顧客を獲得できない人。
会社員時代には優秀だったのに、独立した瞬間に仕事がなくなった人。
そんな人は、表に出てこないだけで、かなりいるのではないだろうか。
成功した話はSNSに書ける。
しかし、
「今月も売上がありませんでした」
とは、なかなか書けない。
だから成功例ばかりが目に入る。
これも一種の「生存者バイアス」なのだろう。
そう考えると、私の会社だけが異常なのではないのかもしれない。
とはいえ、それで安心していても仕方がない。
経営である以上、いつかは売上を作らなければならない。
技術や資格があっても、商品がなければ売上にはならない
会社を始めてみて、痛感したことがある。
知識があることと、商売ができることは違う。
資格があることと、商品が売れることも違う。
会社員として長く働いてきた経験がある。
技術の知識もある。
経営も学んだ。
それでも、自分でゼロから売上を作るとなると話はまったく違う。
会社員なら、会社という巨大な仕組みが仕事を運んできてくれる。
会社の信用がある。
営業部門がある。
商品がある。
取引先がある。
請求の仕組みがある。
ブランドもある。
独立すると、そのすべてを自分で作らなければならない。
これは想像以上に大変だった。
特に一人会社の場合、
商品開発も自分。
営業も自分。
マーケティングも自分。
経理も自分。
契約も自分。
ホームページも自分。
SNSも自分。
そして、社長も自分。
社長という肩書きはある。
しかし、実態は「全部担当」である。
なかなかハードモードだ。
最大の問題は「何を売る会社なのか」が定まらなかったこと
この1年半を振り返ると、最大の問題はこれだったと思う。
センリアドバンス株式会社は、何を売る会社なのか。
この質問に、一言で答えられなかった。
これが痛かった。
AI。
技術。
経営。
教育。
資格。
コンテンツ。
いろいろなことができる。
しかし、裏返せば、
「結局、何を買えばいい会社なの?」
となってしまう。
経営者本人が商品を説明できなければ、お客様が買えるはずもない。
ここは非常に重要な反省点だと思っている。
「自分に何ができるか」
ではなく、
「誰の、どんな困りごとを、いくらで解決するのか」
を決める必要があった。
今さらながら、事業とは非常にシンプルなのだと思う。
困っている人がいる。
その問題を解決する。
対価をいただく。
これが商売だ。
私は「できること」を増やすことに力を使いすぎて、「売れるもの」を作ることが弱かった。
会社をたたむことも考えなければならない
そして、いよいよ避けて通れない問題がある。
会社を続けるのか。
これである。
法人は、存在しているだけでもお金がかかる。
会計ソフトも必要になる。
税務申告も必要になる。
法人住民税もある。
銀行口座や各種サービスの維持費もある。
社会保険などの問題もある。
売上がなくても、法人には固定費が発生する。
つまり、
「売上がないけれど、とりあえず会社だけ残しておこう」
という状態にもコストがかかる。
個人事業なら売上が少ない時期を耐える方法も比較的取りやすい。
法人はそう簡単ではない。
だから、感情だけで会社を残すわけにはいかない。
これはかなりつらい。
会社には自分の名前以上に、自分の夢が乗っている。
登記した日。
銀行口座を作った日。
会社名を考えた時間。
事業計画を考えた時間。
「これから何かできるかもしれない」
と思った時間。
それらを考えると、
「廃業」
という二文字は重い。
しかし、経営者なら考えなければならない。
「続けるか、やめるか」ではなく、期限を決める
ただ、今すぐ会社をたたむという結論を出す必要もないと思っている。
むしろ必要なのは、感情ではなく期限と数字だ。
例えば、次の3か月。
あるいは半年。
その期間を「事業再構築期間」と決める。
そして目標を明確にする。
たとえば、
月商5万円。
月商10万円。
顧客3社。
有料サービス1商品。
継続契約1件。
金額そのものは大きくなくてもいい。
大切なのは、
「誰かがお金を払ってくれた」
という事実を作ることだ。
ゼロと1の間には巨大な壁がある。
月商1万円から10万円より、0円から1万円のほうが難しい場合すらある。
だから、まず売上ゼロの状態から抜け出す。
そのために、事業を絞る。
私なら、これから何を売るのか
ここまで失敗した以上、もう格好をつけても仕方がない。
大きな事業構想より、小さくても実際に売れる商品を作るべきだと思っている。
例えば、
「AIを使った中小企業向け業務改善相談」
「技術者向けキャリア相談」
「資格取得者向けの知識・経験の収益化支援」
「小規模企業向けAI活用研修」
「経営者向け生成AI導入支援」
「技術系企業向け文章・資料作成支援」
などだ。
ここで重要なのは、
「AIコンサルティングをします」
では弱いということ。
もっと具体的にする。
例えば、
90分3万円で、御社の業務からChatGPTで削減できる作業を3つ見つけます。
これなら商品になる。
あるいは、
中小企業経営者向け・生成AI導入診断 19,800円
でもいい。
何をしてくれるのか。
いくらなのか。
誰向けなのか。
それが一目で分かる商品を作る。
そして売ってみる。
売れなければ変える。
また売る。
それを繰り返す。
MBAでいうところの戦略以前に、まず商売を成立させなければならない。
ここを私は少し難しく考えすぎていたのかもしれない。
「会社を残すこと」を目的にしてはいけない
ここも重要だと思う。
会社を続けることそのものが目的になってはいけない。
会社は道具だ。
何かを実現するための器である。
だから、会社という器が自分の目的に合わなくなれば、畳むという判断も経営判断になる。
会社を閉じることは、人生を閉じることではない。
法人を解散しても、個人として仕事はできる。
再び会社員になることもできる。
個人事業を始めることもできる。
そして、また必要になれば会社を作ることだってできる。
そう考えると、
「会社をたたむ=敗北」
ではない。
ただし、まだ試せることが残っているなら、最後にもう一度、商売そのものに挑戦してみたい。
1年半は、本当に「何もできなかった」のか
ここまで書いて、少しだけ考え方が変わってきた。
確かに、売上という意味では成果を出せなかった。
経営者としては厳しい結果だ。
これは認めなければならない。
しかし、
「1年半、何もできなかった」
という表現は、少し違うのかもしれない。
会社を作った。
決算を経験した。
会計を覚えた。
法人のお金の動きを知った。
社会保険の仕組みに直面した。
税金も学んだ。
商品を考えた。
失敗した。
売れないという現実も知った。
そして何より、
会社員時代には見えなかった「売上を1円作ることの難しさ」を知った。
これはかなり大きな経験だった。
会社員時代には、何億円、何十億円という数字を扱うことがある。
しかし、自分の会社で1万円を稼ぐほうが難しい。
この感覚は、自分で事業をやってみなければ分からなかった。
経営者には「撤退する勇気」と「もう一度試す勇気」の両方が必要なのだろう
経営には、二種類の勇気があるのだと思う。
一つは、
続ける勇気。
もう一つは、
やめる勇気。
どちらが正しいかは、まだ分からない。
会社を続けて、数年後に
「あのときやめなくてよかった」
と思うかもしれない。
逆に、
「あのとき早く撤退しておけばよかった」
と思うかもしれない。
未来は分からない。
だからこそ、感情ではなく数字を見なければならない。
手元資金はいくらあるのか。
年間維持費はいくらなのか。
今後半年で売上を作れる可能性はあるのか。
会社という形態を維持する合理性はあるのか。
これを冷静に計算する。
今は、苦しい当番なのだと思う
野球では、打てない日もある。
テニスでも、何を打っても入らない日がある。
投資なら、買った瞬間から下がる日だってある。
人生にも、そういう時期があるのだろう。
今の私は、
「苦しい当番」
なのだと思う。
なかなかアウトが取れない。
ランナーがたまる。
ベンチを見る。
しかし、まだ監督は交代を告げてこない。
だったら、もう少し投げてみよう。
ただし、同じ球を投げ続けて打たれているのなら、球種を変えなければならない。
会社経営も同じだ。
これまでの1年半と同じことを続けるのでは意味がない。
商品を絞る。
値段を決める。
顧客を決める。
売る。
売れなければ直す。
もう一度売る。
それでもダメなら、そのときは会社をたたむことも考える。
それでいいのかもしれない。
今日の結論――恥ずかしい決算書も、自分の経営史の1ページ
9月末の決算を整理しながら、かなり落ち込んだ。
売上が立っていない。
1年半も経った。
何をやっていたのだろうと思う。
経営者として恥ずかしい。
会社をたたむことも、そろそろ真剣に考えなければならない。
でも、今日こうして数字を見たからこそ、一つだけはっきりした。
次の1年を、これまでと同じ1年にしてはいけない。
続けるなら変える。
変えないなら続けない。
それくらいの覚悟が必要なのだろう。
成功した経営者の話を書くブログはたくさんある。
だったら私は、
「売上が立たず、会社をどうするか悩んでいる一人社長」
の現実を書いてみようと思う。
格好は悪い。
でも、これも経営だ。
いつか事業が軌道に乗ったとき、
「あの決算のときは、本当に会社をたたもうと思っていた」
と笑える日が来れば最高だ。
もし来なかったとしても、この1年半で経験したことまで消えるわけではない。
今日は決算書を見ながら、自分の力不足を思い知らされた。
かなり苦しい当番だ。
それでも、まだ試合終了ではない。
次に投げる一球を、考えようと思う。

